'08年5月18日、任期満了に伴う一宮町の町長選挙は投票日を迎え、即日開票された。
結果は、市民グループの推薦を受けた新人の玉川孫一郎氏が、接戦のすえ見事当選を果たした。これは一宮町始まって以来の快挙である。
 返り咲きを謀る元町長と、この前の選挙で惜しくも1票差で敗れた候補との三つ巴の混戦で、開票の終盤まで横一線で並んでいたが、夜10時近くになってやっと結果が出た。

 思えば永かった。それは数年前からはじまっていたのです。
 人口1万2千人余りのこの一宮町も、いわゆる「平成の大合併」の波にさらされていました。茂原市を中心に、白子町、長南町、長柄町、睦沢町、長生村の7市町村を合併しようというかなり強引なもので、結局は巨額の財政赤字にあえぐ茂原市による周辺町村の吸収合併以外の何ものでもない。一度は断ち切れになった合併協議会が再開され、かなり現実味を帯びて来た頃、一宮町では「住民投票による賛否」を求める市 民運動がはじまった。また、地縁・血縁・利益誘導による典型的な「田舎型町議選挙」に対する公開討論会の開催など、住民参加の芽が吹き出しつつあったのです。
 住民投票条例の制定とそれによる賛否で合併の是非を問おうという署名活動が起こり、有権者のほぼ2/3に当る約6,500もの署名を集め、近藤町長(当時)に手渡したが、近藤町長はこれを無視。しかし、議会での賛成が得られず昨年、長生村、一宮町、白子町の離脱によって破談となったのが昨年。だが、その火はいまだに燻り続けている。

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○写真1、2:通信のイラストとポスター作りでお手伝いさせていただきました、…ちょっと自慢)

 この住民運動の中から押されて候補に立ったのが玉川氏です。玉川氏は地元の出身で、千葉県庁の職員として様々な行政分野を経験し、定年退職後この市民運動に加わっていた。その玉川氏が立候補することを決意したのが3ヶ月ほど前でした。後援会を立ち上げ、運動がはじまったものの、選挙なんてはじめてという素人の寄せ集めで、試行錯誤の連続でしたが、地道な個別訪問やミニ集会、通信の戸配・新聞折り込みなどで町の人の声を聞き、吸い上げていったことが結果に結びついたようです。何よりも後援会の皆さんの尽力には頭が下がります。僕なんか少しお手伝いをする程度で、あまりお役に立てませんでしたが(通信のイラストとポスター作りでお手伝いさせていただきました、…ちょっと自慢)。

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○写真3:クリックで別WINオープン

 こうした手作りの選挙や市民派の新町長が誕生したことなど小さな町だからこそできたことで、これってとっても民主主義的なことなのではないでしょうか。「環境と住民力」を謳った新町長の元、この町も大きく変わって行く兆しが見えてきたようです。僕らがこの町に移住して5年。来てみて分かる町の陰の部分にかなり失望していたところもあったのですが、ようやく皆さんに胸を張って言えそうです。「良い町だからどうぞいらして下さい」と。  (え)