軍配者1 軍配者2 軍配者3

▲富樫倫太郎・著『早雲の軍配者』『信玄の軍配者』『謙信の軍配者』中央公論新社

あまり本を読まなくなって久しいが、友人の吉井君が熱心に読んでいる姿に、ついつい釣られて僕も読む羽目に。しかし読み始めたら止まらない。それだけ面白かったのでご紹介します。

それは富樫倫太郎氏の「軍配者シリーズ」3部作『早雲の軍配者』『信玄の軍配者』『謙信の軍配者』です。
軍配者というのは俗に言う軍師のことで、戦国時代前期に活躍し名将と言われた北条早雲、武田信玄、上杉謙信のそれぞれに仕え、数々の戦を指揮した軍配者=風摩小太郎、山本勘助、宇佐見冬之助の三人の姿を追っている。

この三人は足利学校で共に机を並べた学友であった。足利学校というのは軍配者を養成する大学のようなところで、全国から優秀な人材が集まり軍配者となるべく必要な様々な知識を学ぶ。足利には度々演奏で行ったことがあり、何度かその前を通りがかったことがあるのですが、かく言う私もそのことを知らなかったのがちょっと恥ずかしいが、五百年ほど前に三人があの門をくぐったのかと思うと妙に親近感が湧く。

軍配者を養成する場所は足利と京の五山だけだったので軍配者同士は顔見知りであったり同じ先生についた弟子同士であることが珍しくないという。生まれも育ちも、歳も14、16、20と違う三人の強い個性は、時にぶつかい合いながらも奇妙な友情で結ばれ、互いに戦場で相見え資力を尽くして戦うという同じ夢を抱き、やがて別々の主に仕え、壮絶な運命に巻き込まれていくこととなる。

こんな風に書くと「な〜んだ、よくある戦国時代ものか」と思う人もいるかもしれないが、ちょっと違う(と思う)。なんかPOPなのである。表紙からしてコミック本かと思わせるくらいの軽さだ。読み進むうちに、これはまさに「戦国青春グラフィティ」だ!と確信する。情景や人物の表情といったビジュアルが浮かんで来る。そのままコミックや映画にしたらそれもきっと面白いものになるだろう。是非、見てみたい。

それにしても戦国時代の農民に生まれなくて良かった。当時の農民は牛馬にも劣る扱いで、重税にあえぎ、飢饉の時などはメシを食わせて生かすより奴隷市場で買った方が安上がりだから餓死させることもなんとも思わない、そんな時代だったという。
とは言え、いつの時代も生きていくのは大変だ、と最近つくづく思う。グローバリズムによる世界規模の競争にさらされ、分配の不均衡が著しい。資本主義が行き詰まりを見せ、恐慌の不安に常に苛まれている。温暖化による大きな気候変動で災害が頻発するこの時代。指導者たちは何をしているのだろうか。北条早雲のような人がいれば…とつくづく思う今日この頃です。やれやれ。(え)