2007
鈴木エージ
(C)1986 豪 92分 LD・VTR=ヘラルド *劇場未公開
=あらすじ・解説=この映画は「ナムンワリ」と呼ばれるドリーミング・クロコダイル(神聖なワニ)にかかわる人々の話である。
バケツをひっくり返したような豪雨の後、川でワニの密猟をしていた白人が体長7メートルを超える巨大なワニに襲われ死体で発見される。この地方で絶滅の危機に瀕しているワニの調査と保護にあたっている主人公の野生動物保護官スティーブは、人間を襲う巨大ワニへの対処を巡り、アボリジニの長老と保護局との板挟みに陥る。
アボリジニの長老が言うには、「あのワニは普通のワニとは別物で、もうずっと昔からこの地方の川の何処かに住んでいる主のようなもの(ドリーミング・クロコダイル)で、決して殺したりしてはならない」と言う。当局側は人間への被害まで出してワニを保護する必要はないし、また日本のホテル建設計画への悪影響を恐れている。そして翌日、水遊びをしているアボリジニの子どもが巨大ワニに襲われた。この騒ぎで町からハンター数人が駆けつけてくる。アボリジの長老はこの惨事に対しても「あの子は体に持病を持っていて、そう永くは生きられなかった。ナムンワリは此処とは違う別の世界にあの子を連れて行ってくれたのだ」と話す。
そして気が立っている巨大ワニをなだめるために歌を歌い、ナムンワリ・ダンスを村人全員で踊る。ここで伝統的なディジュリドゥの演奏とダンスを見ることができ、このシーンが前半のひとつの山場となっています。コロボリーをしているアボリジニ達を他所に、ハンター達は一斉にボートで出て行く。そして無差別にワニというワニを片っ端からライフルで撃つ殺戮シーンとコロボリーのシーンがフラッシュバックのように交錯する。
ハンター達は躍起になって巨大ワニを探しまわっている。このままでは巨大ワニが危ないと、スティーブと長老、そしてその息子は一計を案じたのだが…。
ラスト・シーンでは、長老の骨を息子がナムンワリに食べさせる儀式があるのだが、この息子がディジュリドゥらしきものを持っている。長老の死を悼むように、肉声で叫ぶクッカバラの声がクリークに木霊する。
*『キラー・クロコダイル』とかいう紛らわしいタイトルの 類似品があるので注意されたい。(え)
(文・鈴木エージ)