2007
鈴木エージ
1991年 110分 豪/仏
販売元:(株) ビームエンタテインメント
=あらすじ・解説=やっとこの「幻の映画」を観ることができたのでご紹介します。ディジュリドゥやアボリジニとは直接関係はありませんが、舞台がオーストラリアであることと、個人的に好きなマイルス・デイビスが出演しているからです。といっても決してつまらない映画ではないし、映像もきれいです。もし、レンタル・ビデオ店で見かけたら見てみて下さい。
1991年9月、その突然の訃報は世界に衝撃を与えた。ジャズ界の帝王マイルス・デイビスの死である。この映画は、彼の死の直前に撮影された映画である。映画の内容はこんな感じだ。
少年は風の中にかすかに音楽を聴いたようながした。が、それはオーストラリアの田舎町に緊急着陸しようとしているジェット機の音だった。ジェット機から降りてきたのはマイルス・デイビス扮するジャズ・ミュージシャンのビリー・クロスだ。ビリーはお礼の代わりに演奏する。少年は音楽の素晴らしさに目覚めた。帰り際、ビリーは少年に「いつか俺を訪ねて来なさい」と言い残して、去った。
少年ジョンはトランペットを始め、ビリーのレコードを聞いて成長した。オーストラリアの大地にトランペットの音が響き渡る。が、彼の傍らにはいつもビリーの幻影があった。20年の歳月が流れた。
ジョンはオーストラリアの荒野で“DOGER”、と呼ばれるディンゴ(野犬)狩りのハンターをして生計を立てている。幼なじみの美しい妻とかわいい子供。田舎町のダンス・パーティの伴奏をするバンド。何気ない日常に浸りながら、ジョンは夢を抱いている。あのビリーを訪ねてパリに行き、成功する夢だ。そして一度罠にかかり生き延びた狡猾なディンゴとの奇妙な関係が、映画の伏線として描かれている。
ひと騒動の挙げ句、ジョンはパリのビリーを訪ねるのだが、そこには枯れたビリーの姿とスノッブな都会の静けさだけが漂っていた。ジャズがクールであった時代は終わってしまったのか....。映画の中のビリーの姿と晩年のマイルスの姿がどうしても重なってしまう。
ビリーから「隣の芝生は青く見える」と言われたジョンはオーストラリアに帰っていく。結局、「音楽」は日常の生活や場に在るもので、そこから離れては新しいものも生まれてこない、ということを言わんとしているのでしょうか。
是非、マイルスにもディジュリドゥを吹いてもらいたかったなぁ。(え)
(文・鈴木エージ)