2007
カラキ・ヤスオ
=あらすじ・解説=『THOMSON OF ARNHEMLAND』は、2000年6月にオーストラリア国営放送で放映され、最近ビデオ化されたものです。アボリジニに対する政策の背景に何があったのか、オーストラリア近代史の裏側を知る資料となります。
これは、1933年東アーネムランドで、レイプされたことへの報復として、日本人漁師ら計8人を殺したアボリジニの事件のために、現地へ行くこととなった人類学者トムソンの物語です。アーネムランドのヨルングと生活を共にしたトムソンが、我々はアボリジニの領域には踏み入らずに共存政策をとるべきだと訴えるたびに、同化政策を主張し政府のアボリジニ政策に影響力のあったエルキン教授に反論されます。当時、トムソンの主張に耳を傾ける人はほとんどなく、つい最近まで彼の業績もあまり評価されていませんでした。もし、当時のオーストラリア政府が、彼の主張を認めた政策をとっていたらと思います。同化政策の裏側にあったトムソンとヨルングの友情は素晴らしいものです。残念なことに、トムソンが各地で収集した録音や映像は火災で焼けてしまいましたが、友情と信頼の結果にヨルングの人々が彼に託した品物は、今でもメルボルン博物館で見ることができます。(カラキ・ヤスオ)
(文・カラキ・ヤスオ)